岩本医院 沓掛,石下,坂東市, 内科、外科、循環器内科、消化器内科、小児科、呼吸内科

認知症外来

珍しくなくなっている認知症

日本は急速な高齢化を迎えています。女性は86歳、男性は80歳の平均寿命となり、認知症は決して珍しいものではなくなっています。長寿となれば、体がおとろえたり、物忘れが現れたりすることも自然なこと、避けられない事であると考えます。これからの日本は、認知症が他人事ではなくなり、誰にでも極身近な問題となっていくでしょう。

認知機能の低下をきたした本人は物忘れや、今までできたことができなくなり、とまどいや漠然とした不安を抱えています。御家族もまた以前とは違う様子にとまどい、時にいらだち、厳しい言葉をかけてはいけないとわかっていてもついつらくあたりがちです。ご家族の不安やいらだちが、さらに認知症を悪化させてしまう悪循環をおこすこともあります。家族も自分の仕事や生活がありそれもある程度仕方のないことなのかもしれません。 現代の医療では認知症を根本的に直すことは難しいのが現実です。つまり記憶力や判断力低下の進行を薬や非薬物療法で遅らせることは可能ですが、完全に元にもどすことはできないということです。そのような中でご家族が一番とまどうのは、記憶障害や判断力の低下より患者さんのエネルギーがありあまっているような場合、もしくは逆に欠乏しているような場合です。

エネルギーが有り余って出てしまう症状が、徘徊(はいかい)や、スイッチが入ったように突然怒り出したり、ありもしないものが「見える。」とおびえたり騒いでしまうことです。

 

逆にエネルギーが極端に失われた症状が、たとえば表情が失われて能面のようになってしまう、まったく歩けない、言葉を発しない、食事がとれない、明らかに生命力が欠乏しているような場合です。

 

このような、両極端の症状が生じる原因としてまず内科的な疾患が隠れていないか調べます。認知症が原因の場合は、時に薬の力も借りて治療します。ご高齢の方にあった投与量で慎重に経過を追い、患者さん、御家族と十分コミュニケーションをとりながら治療を行っていきます。

 

患者さん・ご家族を共に救う医療

医師の役割として患者さんを支える御家族が疲れ切ってしまわぬようご相談に乗り、適切な量や種類の薬で工夫できるところはお薬の力を借りて患者さん・ご家族を共に救う事をできるよう努めてまいります。

 

認知症の症状

中核症状

記憶力・理解力・判断力の低下
見当識障害(時間・季節・場所の感覚がうすれること)
例)今までできていたこと、掃除や洗濯、料理などの家事や趣味ができなくなった。お金の出し入れができなくなった、今日が何日で何曜日なのか忘れてしまい何度も家族に確認する、昨日したこと事を完全に忘れる、いつもあっている人の事が思いだせないなど。

周辺症状

幻覚(見えないものがみえるなど)
妄想、抑うつ、意欲の低下、徘徊、興奮など
 

認知症の診断

*画像も参考になりますが、画像がすべてではありません。日頃の状態、症状をよく観察して診断治療行う必要があります。また最初の診断に固執するあまり間違った治療を行うケースもあります。

認知症と間違えやすい疾患、状態

せん妄;肺炎、心不全、手術直後など全身状態の不良、急激な環境変化への対応の能力の欠如からくる一過性の状態。せん妄を起こした人が将来的な認知症に移行する人もあります。

うつ病;認知症の一症状としてうつの状態を示す場合もあり鑑別の困難なケースがあります。

その他;甲状腺機能異常(低下症)、ビタミン欠乏、肝硬変(高アンモニア血症)

認知症の代表的な疾患の種類と特徴

アルツハイマー型認知症

最も多い認知症です。一見普通にみえることも多い、最近の事が覚えていられない、散歩や運転時など迷子になりやすいなども初期症状で多いものです。

レビー小体型認知症

日中うとうとしていたり、原因不明の意識消失などの意識状態の変動、歩行障害(錐体外路症状)、寝言が多い、ありありとした幻視(虫や小動物が見える)など多彩な症状を呈するためそれぞれ適切な治療が必要です。風邪薬や睡眠剤が効きすぎるなどの薬剤過敏性が現れる事もあります。

前頭側頭葉型認知症(ピック病など)

自制心がなくなり、横柄な態度をとったり、万引きをしたり、反社会的な行動をとるようになります。甘い物を特に好むようになったり、同じことを繰り返し行うこともあります。

脳血管認知症

麻痺がでるような大きな脳梗塞だけでなく、小さな脳梗塞の積み重ねでも起きてきます。ささいな事で怒ったり泣いたりするの(感情失禁)も特徴です。高血圧を背景とした人が多いです。

これらは独立した疾患ですが、合併や移行もあり得ます。種類鑑別に固執するよりその人の状態を見極めて個々にあった治療を行う必要があります。

薬での治療法以外でも大切な事

薬だけが治療ではありません。できるだけ患者さんがうまくできなくても家族内の役割をもち、家族や社会の中で自分が必要な存在であると感じられる環境が大切です。また介護するご家族も一人で抱え込みすぎて疲れ切ってしまわないように、介護保険サービスを利用することも必要です。

高齢者の場合、認知症がなくても記憶力は低下します。身体能力も低下します。若い人の手助けをうけて生活をしています。それでも病気だとはいいいません。たとえ認知症になり、記憶力が低く、判断力や身体能力が低くとも他の生活に支障がでるような重大な症状がみられなければその人は「普通のお年寄り」と同じです。徘徊や幻覚、興奮などの周辺症状が改善する事で、記憶力低下などの中核症状はあっても普通の高齢者として生活を続け天寿を全うできるのです。

当院では、認知症の状態を正しく把握診断して、患者さん一人ひとりにあった治療をご提案します。薬物療法を行う場合は、副作用に十分注意しながらご高齢の方にあった投与量で慎重に経過を追い、患者さん、御家族と十分コミュニケーションをとりながら治療を行っていきます。逆に日頃の様子を一番見ているご家族の報告がないと適切な治療ができません。医者まかせではいけないのです。

認知症外来の流れ

①問診
家族に問診票に物忘れ以外に気になる点やご希望をおたずねします。

②診察
血圧測定から一般的な診察を行います。歩行の仕方の観察、眼球運動、レビー小体型認知症に見られる歯車様筋固縮の有無などを評価します。

③知能検査
長谷川式簡易知能検査、MMSEを行います。

④血液検査
ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸、貧血、甲状腺ホルモンなどのチェックをします。

⑤画像検査
CT、MRI 脳萎縮の部位、程度の評価、脳梗塞の有無評価、水頭症の有無評価をします。

⑥薬の選定
薬の効果と副作用の説明、注意点などの説明

⑦本人家族へのアドバイス
介護サービスの利用説明などを行います

当院では、名古屋で認知症治療を行う河野和彦先生が提唱するコウノメッソドを元にした診断治療を行います。河野先生の診断と治療法に驚くと共に成果を実感しています。

下記の様な方、御相談下さい。

①物忘れが気になるが精神科や神経科を受診するのには抵抗感がある方、またはそのご家族。
②他の医療機関に治療しているがうまくいっていない方。

例)認知症の治療を受けたが、元気や食欲が極端になくなってしまっている。またはその後歩けなくなってしまった。
例)認知症の治療受け逆に落ち着きがなくなり、怒りっぽくなった等性格が変化してしまった。

*物忘れだけではなく、すでに徘徊(はいかい)、幻覚(げんかく)などがある、逆に極端に元気がなくなってしまったなどでお困りの御家族もぜひ一度ご相談にのらせて下さい。